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「石ころのココチ」

モノのココチ Vol.3 

 

 

大磯にいる友人に会いに行くと、ほぼ決まって友人宅からほど近い海へ石を拾いに行く。

そこの浜辺は遊泳禁止の浜辺で、なんとなく深そうで怖い。

 

あまり海を見ないように足元を見ながら歩いてたら、

個性豊かな石がポツポツと目に入る。

 

一つずつ手に取っていろんな角度から眺めては

もっと面白い石があるんじゃないかと気になり始め、

気がつくと地面から数十センチくらいまで顔を近づけて

夢中に石を探してること早1時間。

 

ふぅとひと息、顔を上げて深呼吸すると、

波の轟音がだんだん聞こえてきて、頭がクラッとする。

あまりに集中していて怖かった波の轟音も聴こえなくなっていた。

気がつくと足元が見えにくいほど薄暗く、来た道の景色がすっかり様変わりしていて

慌てて帰路に着く。

 

 

家に帰って美味しい食事とお酒を飲みながら石を並べてお披露目会。

私は模様が個性的に入った形が面白い石を多く選んでいて、

友人は色鮮やかな質感がちょっと変わった石を選んでいた。

 

自分が拾った石と、友人が拾った石の特徴がまったく違っていて

「面白いね」と笑いながら、今度は場所を少し変えて行ってみようと

興奮気味に次に大磯に来る約束をする。

 

 

浜辺で拾った石も、お守りに使う石も、ジュエリーに使う石も全部鉱物だけど

1つのものに欲しい人がたくさんいたり、あまりいなかったりで市場価値が変わるのは

当然といえば当然の仕組みが世の常だよなぁなどと思いを巡らす。

 

誰が欲しくなくても私にとっていいなと思うモノもあるし、

みんながいいなと思うモノが自分もいいなと思う時もある。

 

どちらにしても見て触ってピンッ!と来たそのモノは気持ちを心地よくさせてくれるので、

あわよくば石ころをこっそり持ち帰り、しばらく棚に飾って眺めたり手に取ったり。

潮の匂いと強い風、持ち帰りそびれた石ころなどを思い出したりしている。

 

 

 

 イラスト/文:Tsugumi Iwakawa

 

 

 

→ Vol.4へつづく