履き心地が良い革靴が生まれる理由
今年の春から販売となったN/L、grinのオリジナルレザーシューズ。
今回のレザーシューズにはたくさんのこだわりが詰め込まれています。
ヌメ革に近いタンニンとクロムの混合鞣しによる革の独特なコシ、そして強度を高め、丈夫な作りに。
また革一枚一枚、職人が丁寧に手作業でオイルを塗りこむことによって、重厚感かつ高級感のある仕上がりになっています。
手作業によるムラ感と着色剤や仕上げ剤などの薬品を殆ど使用しない、素上げ特有の自然な肌目が魅力なレザーシューズ。
一目見ただけでも「あ!履きやすそう!」と感じた方が多いのではないでしょうか?
そんなレザーシューズがどのように作られているか、革靴工房に取材してきました。
場所は大阪。住宅街の中にある20坪ほどのスペースに様々な機械や道具が並ぶ工房。
見たこともない機械や道具に目移りしてしまい、ついつい質問したいことが溢れてしまいます。
ここでお伝えする工程以外にも細かく製作工程がありますが、ここでは軸となる工程を画像と共にお伝えしていきます。
【裁断】
半裁(丸革を背中側から切り分けてできる2枚の革の1枚分)のどの部分を靴のどのパーツに使うか見極めながら金型で裁断していきます。
靴の顔となるアッパー(足の甲〜つま先部分)は半裁の背中の厚みと張りがある箇所、踵の部分は半裁のお腹に近い柔らかい箇所を使います。
また革の伸び方も縦は伸びず、横が伸びるのでその特性も踏まえつつ、形にする靴にとってベストな裁断を考えながら作業を進めます。
半裁で大体スリッポン15足くらいパーツがとれるそうです。
N/L レザースリッポンのアッパーは全部で3パーツ。金型を半裁の上に乗せプレス機で裁断していきます。
1プッシュ20トンもの圧力がかかるため金型を押さえる手の位置には細心の注意を払い機械を動かします。
機械で裁断すると早いですが、事故など起きないよう集中力と緊張が続く作業ですね。
【製甲】
革専用の特殊なミシンで張り合わせたパーツを縫い合わせていきます。
取材した私スタッフTは家庭用ミシンの針に糸を通すのもモタモタしてしまいますが、当然ながら工房の職人さんはささっと素早く針に糸を通し、迷いなくパーツをミシンの針に走らせます。
よくメンテナンスされた古いミシンが規則正しく動く様子を見ているだけでワクワクしてきますね。
段々と靴の形が見えてくる工程です。アッパーと呼ばれるパーツの出来上がりです。
【底付け】
靴の形成のキモとなる底付けです。
この底付けという工程に“吊り込み”という作業が含まれていますが、この作業は木型に縫製したアッパーをかぶせて形を作っていきます。
革が伸びる方向や伸縮加減を手先で感じながら、表にシワを出さす美しい張りになるよう、何度も調整しながら形作っていきます。
自然素材を扱った革靴はデザインが同じでも全ての革の状態が全く同じとは限りません。
一つ一つ裁断したアッパーに合わせて貼り具合を調整し吊り込み作業をしていきます。
アッパーの皺や歪みを何度も確認しながら進める吊り込み作業
吊り込み作業に欠かせない道具「ワニ」。
機械で吊り込むこともできますが、機械と手作業での形の違いが靴を見比べるとよく分かりますね。
N/L、grinのスリッポンは手作業で吊り込むことにより、自然な曲線、美しい形に仕上がります。
同じ木型で作ったように見えないほど、機械と手作業ではフォルムに差が出ています。
左が手作業の吊り込み、右が機械の吊り込み
サンダルはスリッポンとはまた違った工程でアッパーを中敷きに差し込んでいきます。
中敷にアッパーを差し込む穴は専用の刃で切り込んでいきますが、しっかりした厚みがあるので何十足と切れ込みを入れると手にも負担が。
刃も毎日研いで万全の状態に。
道具は少しでも作業に負担なく無駄なく、正確に進められるよう日々メンテナンスしています。
メンテナンスが行き届いた道具も美しいです。
次は底付けです。
吊り込んだ後、底付けする部分を平にかつしっかり接着できるようグラインダーで革の表面を一皮剥きます。
回転する機械に巻き込まれないよう、しっかり手で固定し、靴の顔になるアッパーを傷つけないよう機械にかける作業です。
靴の底の部分に接着剤を塗り、ソールを付けていきます。
接着剤をつけた靴は一回接着剤のシンナーを飛ばすため1時間ほど置いた後、貼り付け作業直前に靴底の付きがよくなるよう軽く温めます。
ズレないようにしっかり全体を見ながらソールを合わせ仮留めします。
手作業で仮留めした後、さらにしっかり接着するためにプレス機で圧着します。
【仕上げ作業】
靴作り作業の最終段階です。
これまでの各工程の最終チェック及び靴の化粧、中敷き貼り、均し、コバ(側面)を綺麗にして、いくつものポイントを再度目視、触診した上で箱に詰めて完成です 。
今回の取材で出来上がるまでの工程を知った上で、最後に靴を隅々までチェックしている様子を見ると、一つ一つの靴を見守っているような、送り出すような作業に感じました。
足を入れた瞬間感じる心地よさは、こういった仕上げまでのきめ細やかな視点と、様々な工程の確かな技術があってこそ。
出歩く機会も増える中、頼もしく、かつ美しい革靴はきっと心強いアイテムの一つになるはず。
ぜひ、一人でも多くの方にレザーシューズの履き心地の良さを体感していただきたいです。
今回の新作レザーシューズはスリッポン、サンダルそれぞれ2種類のデザインでカラーはブラウン、ブラックの各2色です。
商品ページでぜひご覧ください。
N/L レザースリッポン → 商品ページはこちら
grin レザー リーフスリッポン → 商品ページはこちら
N/L レザーサンダル → 商品ページはこちら
撮影・取材 Tsugumi Iwakawa